聖女、君子じゃございません
「ローラン様! 今すぐ! 今すぐ寝室に向かいましょう!」
「何でですか! 行きませんよ。大体今、食事の最中でしょう」
「それどころじゃありません!」
この人はどうしてこう――――堅物の癖に、人を蕩けさせるのが上手いんでしょう! ズルい! だけどそんなところも好き! 惚れた弱みって奴ですね。どうしようもありません。
よく見たら、ローラン様の顔は真っ赤だった。良かった。ドキドキしているのはわたしだけじゃないみたい。
それだけでも作戦の甲斐はあったのかな?
「何をニヤニヤしてるんですか?」
「え? ローラン様が可愛いから」
「――――――それ、褒め言葉になってません」
結局この夜、鶏肉作戦――――もとい、肉体改造作戦は静かに幕を閉じた。