聖女、君子じゃございません

「ローラン様! 今すぐ! 今すぐ寝室に向かいましょう!」

「何でですか! 行きませんよ。大体今、食事の最中でしょう」

「それどころじゃありません!」


 この人はどうしてこう――――堅物の癖に、人を蕩けさせるのが上手いんでしょう! ズルい! だけどそんなところも好き! 惚れた弱みって奴ですね。どうしようもありません。

 よく見たら、ローラン様の顔は真っ赤だった。良かった。ドキドキしているのはわたしだけじゃないみたい。
 それだけでも作戦の甲斐はあったのかな?


「何をニヤニヤしてるんですか?」

「え? ローラン様が可愛いから」

「――――――それ、褒め言葉になってません」


 結局この夜、鶏肉作戦――――もとい、肉体改造作戦は静かに幕を閉じた。

< 115 / 125 >

この作品をシェア

pagetop