聖女、君子じゃございません
「ローラン様も、少しずつ言葉遣いが雑になってきましたねっ」

「あなたに対して丁寧に接しても、埒が明かないと思ったんですよ」

「うんうん、賢明な判断だっ」


 アーシュラ様は楽しそうに笑いながら、俺の頭を撫でつける。小柄な身体で、精一杯背伸びをして。


「……一体何をなさっているんですか?」

「ん? だって、ローランさまはこれからわたし付きの騎士になるんでしょう? 今からしっかり手懐けておかないとなぁって」


 どうやら犬扱いされていたらしい。俺は頭をヒョイッと動かし、アーシュラ様の手から逃れる。アーシュラ様はキョトンと目を丸くし、それからふふっとあどけなく笑った。


「ねぇねぇ、ローラン様はお幾つですか?」

「――――今年で19歳だ」

「わぁっ、老け顔ですね! まさかわたしと2歳しか違わないとは」

「老け顔⁉」


 あまりにも歯に衣着せぬアーシュラ様の感想に、俺は密かにショックを受けた。自分でも老けている自覚はあったが、面と向かって言われたことは無い。


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