聖女、君子じゃございません
***


(ようやく……ようやく解放される)


 再び王都の地を踏む頃には、俺は心底疲弊していた。

 聖女――アーシュラ様――との旅路は、普段とは違い『無駄なこと』のオンパレードだった。
 やれ疲れたと言っては近くの町に立ち寄り、食事や買い物に付き合わされたり。少し目を離したすきに、湖や花畑で昼寝をしていて、アーシュラ様が起きるのを待ったこともあった。

 天真爛漫。マイペースな上、物凄い気まぐれ。

 おかげで、本来ならば二日ほどしか掛からない行程だというのに、実に3倍以上の日数を要した。振り回された、という言葉があまりにもピッタリくる。大変な数日間だった。


「良かったですねぇ。わたしから解放されて」


 アーシュラ様は近くの露店で購入したジェラートを片手に、ケラケラと楽しそうに笑っている。天使みたいな清らかで美しい顔をしているくせに、その心根は悪魔に近い。こんなの詐欺だ。


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