聖女、君子じゃございません
その時、アーシュラ様の身体がふらりと揺れた。やはり疲労がピークに達しているらしい。
「アーシュラ様!」
俺は思わずアーシュラ様の身体を支える。けれど、アーシュラ様はそんなことは意に介さず、歯を喰いしばり、子どもの手を握り続けている。自分の水分を直接分け与えているのか、アーシュラ様の肌が心なしか乾いて見える。
「アーシュラ様、水分を摂ってください」
「手、離せないから無理」
アーシュラ様は頑固だ。黙って待っていたら、言うことを聞いてくれるとは到底思えない。
「手を離さないで済むならそれで良いんですね?」
俺は水筒をアーシュラ様の唇に押し当て、開けるよう促す。けれど、アーシュラ様は首をブンブンと横に振った。相変わらず歯を喰いしばっているらしい。どうやら呼吸も真面にできていない様子だ。これでは本当に倒れてしまう。効率が悪くなっていることに気づくだけの余裕が、アーシュラ様に無いのだ。
「――――――その手、しっかり握っていてくださいね」
俺はそう言って、水筒の水を口に含む。
それから、今にも気を失いそうなアーシュラ様の背中を抱き、彼女の唇に己の唇を押し当てた。
「アーシュラ様!」
俺は思わずアーシュラ様の身体を支える。けれど、アーシュラ様はそんなことは意に介さず、歯を喰いしばり、子どもの手を握り続けている。自分の水分を直接分け与えているのか、アーシュラ様の肌が心なしか乾いて見える。
「アーシュラ様、水分を摂ってください」
「手、離せないから無理」
アーシュラ様は頑固だ。黙って待っていたら、言うことを聞いてくれるとは到底思えない。
「手を離さないで済むならそれで良いんですね?」
俺は水筒をアーシュラ様の唇に押し当て、開けるよう促す。けれど、アーシュラ様は首をブンブンと横に振った。相変わらず歯を喰いしばっているらしい。どうやら呼吸も真面にできていない様子だ。これでは本当に倒れてしまう。効率が悪くなっていることに気づくだけの余裕が、アーシュラ様に無いのだ。
「――――――その手、しっかり握っていてくださいね」
俺はそう言って、水筒の水を口に含む。
それから、今にも気を失いそうなアーシュラ様の背中を抱き、彼女の唇に己の唇を押し当てた。