聖女、君子じゃございません
 俺は文官ではないし、公務に就いたのも割と最近のことだ。とはいえ、そういう観点で物事を見ようと思ったことも、実際に見たことも無かった。自分より二歳も年下のアーシュラ様が当たり前のようにそうしているというのに、彼女に言われるまで、ちっとも気づかなかった。
 もしもアーシュラ様と一緒に旅をしなかったら、一生気づけないままだったかもしれない。


「やだなぁ、そんなんじゃ無いですよっ」


 アーシュラ様はそう言ってニコリと笑う。


「だって……ほら! 領主さんのところに行ったら、よく宝石とか貰えますしっ。美味しいもの食べさせてもらえますしっ。そっちの方が目当てです」


 ビシッと敬礼をして笑うアーシュラ様に、俺は思わず目を細める。


「……今日の所はそういうことにしておきます」


 そう言ってアーシュラ様の頭をクシャクシャっと撫でると、彼女は恥ずかし気に頬を染めた。


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