聖女、君子じゃございません
 結局、当初の予定を大幅に変更し、この町には二週間ほど滞在することになった。
 助けた子どもは女児で、名をジャネットといった。随分と幼く見えたが、栄養状況が悪かっただけで、実際は12歳らしい。


「さぁさぁ、食事の時間です! 食べて食べて!」

「――――アーシュラ様……なんなんですか、この物体は」


 ある日のこと、アーシュラ様は町の広場に大きな鍋を用意し、自ら料理を始めた。
 しかし、その過程は傍目で見ていて恐ろしい。アーシュラ様は食材と一緒に、何度も指を切りそうになっていた。
 その後も、煮炊きの最中に奇声を発したり、何やら儀式めいたことをしていて、俺の知っている『料理』とは何もかもが違っている。
 挙句の果てに、出てきた皿に入っていたのは、真緑色のどろどろとした液体状の何かだった。結果が結果なので、料理というより黒魔術を発動したと言われた方がしっくりくる。


「え? アーシュラ様特製、栄養ましまし粥だけど」

「お粥? これが本当にお粥? 薬か毒物か何かの間違いじゃなくて?」


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