聖女、君子じゃございません
「今度は一体何なんですか?」

「聴きたいことがあったんです。こっちの宝石と、こっちの宝石、売ったらどっちの方が高くなります? どっちもすっごく綺麗だよね~~! きっと良いお金に――――――」

「ちょっ! それ、この間貰ったばかりのダイヤモンドでしょう?」


 大きく煌びやかな宝石を両手に掲げ、下碑た笑みを浮かべるアーシュラ様に、俺は嘆息する。


(全く! 貰う時はあんなに『大切にします』って言ってた癖に)


 親指の爪よりも大きなエメラルドも、アーシュラ様の髪色によく似た色合いのダイヤモンドも、彼女にとっては換金後の価値しか見出せないらしい。折角貰っても、着けるのはその時だけ。その後、身に着けているところを見たことがない。アーシュラ様の感性は、相変わらず俺にはよく分からない。分からないのだが。


「どちらも聖女様が着けたとあれば、相当な値になるでしょうね」

「そう? そう? うーーん、夢が膨らむなぁ。えへへ……次に大きな街に着いたら換金するんだぁ~~」


 アーシュラ様はそう言って床に置いていた麻袋を引っくり返す。中には指輪やブローチ、イヤリングなどが、無造作に入れられていた。


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