聖女、君子じゃございません
「――――いつも思いますけど、何でそんなにお詳しいんですか?」

「色々見てきましたからね! この街に来るのは二度目ですし」


 ニカッと歯を見せアーシュラ様が笑う。俺は思わず苦笑した。己の視野の狭さを認識せずにはいられない。本当に完敗だ。


(それにしてもアーシュラ様は、聖女として目覚める前はどのようにお暮らしだったのだろう)


 生まれた時から聖女であったなら、もっと早くに王宮へと迎えられていたはずだ。と、いうことは、彼女の力は後天的なものなのだろう。その割には、随分と力を使いこなしているように見える。

 それに、よくよく思い返してみると、俺がお迎えに上がった時、アーシュラ様は一人暮らしだと言っていた。両親はどうしたのだろうか。まだ十七歳だというのに、俺が思うよりもずっと、苦労をなさってきたのかもしれない。そう思うと、何だか胸がモヤモヤ疼いた。


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