聖女、君子じゃございません
「嫌です! かっ、帰ります! わたし、お家に帰る!」

「そんなことできないに決まっているでしょう! 行きますよ!」

「いやっ! 嫌だ! 帰る! お家に帰る~~~~」


 逃げまどうアーシュラ様の腕を掴み、そのままヒョイっと横抱きにする。アーシュラ様は顔を真っ赤に染め、イヤイヤと子供みたいに首を横に振った。


「往生際が悪いですよ、聖女様」


 形勢逆転の兆しに、俺はニヤリと微笑む。散々我儘を聞かされたのだ。このぐらいの反撃、許されてしかるべきだろう。

 アーシュラ様はほんの少し腕を掲げたまま、しばらくの間押し黙る。やがて、諦めたように嘆息し、黙って俺に身を預けたのだった。
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