聖女、君子じゃございません
「じゃぁじゃぁ、おやすみのちゅーぐらいはオッケーだよね?」

「そっ……それは…………」


 ダメだと言いたいが、断る理由がない。本当は色々と困るけれど、既にもう手を出した後だ。今更ダメだという理由が説明できない。

 というか、俺だって本当はキスぐらいしたい。ただただ、自分の理性を信用できないだけだ。

 アーシュラ様は嬉しそうに俺のことを見つめていた。顔を突き出して、言外に『早く早く』と急かしている。破壊力が凄い。あざとい。


「俺が抗えないって分かっててやってるでしょう?」

「えへへっ」


 俺はアーシュラ様の笑い声ごと、自分の唇に閉じ込めた。触れるだけの口付けだが、寝る前だからこれぐらいで十分だ。寧ろ十分すぎる。


「おやすみなさい、アーシュラ様」

「おっ……おやすみなさい」


 アーシュラ様は真っ赤になって自室へと帰って行った。してやったり、という気分だ。その日は思いのほか、気分よく眠ることが出来た。


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