聖女、君子じゃございません
2.聖女の目論見
「そなたがアーシュラか」
厳かな空気に包まれた謁見の間。我が国の国王陛下がそう尋ねる。
「はい。わたくしがアーシュラにございます」
アーシュラ様は、それはそれはしおらしかった。ここまで来たらさすがに逃げられないと腹をくくったのだろう。俺としては正直ざまぁ見ろという感覚だ。
(それにしても)
国王陛下や王妃様に対し、アーシュラ様は非常に慇懃に接している。普段のフランクな口調、絶妙に癖のある喋り方とは大違いだ。彼女がとんでもない失礼を働くのではないかと密かに心配していた俺としては、一安心だ。
「そなたを我が国の聖女として迎え入れよう」
陛下の言葉を合図に、歴代聖女が身に着けてきた王家の秘宝がアーシュラ様の前へと運ばれる。
中央に大きな白い石の埋め込まれたヘッドティカ。陛下自らそれをアーシュラ様の頭に載せると、秘宝はたちまち白から赤へと色を変えた。
謁見の間に集まった面々は歓声を上げ、新たな聖女の誕生を喜ぶ。唯一、アーシュラ様だけがこっそりと、不服そうな表情を浮かべていた。
厳かな空気に包まれた謁見の間。我が国の国王陛下がそう尋ねる。
「はい。わたくしがアーシュラにございます」
アーシュラ様は、それはそれはしおらしかった。ここまで来たらさすがに逃げられないと腹をくくったのだろう。俺としては正直ざまぁ見ろという感覚だ。
(それにしても)
国王陛下や王妃様に対し、アーシュラ様は非常に慇懃に接している。普段のフランクな口調、絶妙に癖のある喋り方とは大違いだ。彼女がとんでもない失礼を働くのではないかと密かに心配していた俺としては、一安心だ。
「そなたを我が国の聖女として迎え入れよう」
陛下の言葉を合図に、歴代聖女が身に着けてきた王家の秘宝がアーシュラ様の前へと運ばれる。
中央に大きな白い石の埋め込まれたヘッドティカ。陛下自らそれをアーシュラ様の頭に載せると、秘宝はたちまち白から赤へと色を変えた。
謁見の間に集まった面々は歓声を上げ、新たな聖女の誕生を喜ぶ。唯一、アーシュラ様だけがこっそりと、不服そうな表情を浮かべていた。