聖女、君子じゃございません
(そんなこと、させるか)


 次の瞬間、従者の一人が剣を抜く。俺はアーシュラ様を間合いから押し出し、斬撃を搔い潜って、相手の鳩尾に一撃を喰らわせた。硬い剣の柄が肉にめり込み、相手は唾を吐いて膝を突く。続くもう一人は、低い位置から俺に向かって剣を振った。


(遅い)


 がら空きになった首元に手刀を喰らわせると、相手はすぐにバランスを崩す。すかさず肘鉄をお見舞いし、地面に叩きつけたところで、王太子が俺に向かって剣を振り下ろした。


「ローラン様っ」

「大丈夫。こんなへなちょこ攻撃、当りゃしません」


 従者を押し潰しつつ、俺は王太子の剣の柄目掛けて蹴りを入れる。案の定握りが甘く、剣はあっという間に地に落ちた。


(これで武力重視の国、アスベナガル――――その王太子と従者だというのだから呆れる)


 その首筋にピタリと刃を押し当てると、隣国の王太子はズルズルと跪いた。勝負ありだ。
 すかさずアーシュラ様が光りの輪を生み出し、嬉々とした表情で彼等を捕縛する。


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