聖女、君子じゃございません
「やりましたね、ローラン様! さてさて、こいつらこれから一体どうしてやりましょう?」


 先程までとは打って変わり、すっかりいつものアーシュラ様に戻っている。悪役さながらのセリフをノリノリで口にし、清々しいほどに下碑た笑みを浮かべている。


「そうですね……」


 俺はアーシュラ様の頭を撫でつつ、我が国の群衆にアホ面を晒している男達をチラリと見た。
 我が国の聖女に刃を向けた――――それだけで罪状は十分だ。
 第一、先程の傷の様子や、王太子らしさの欠片もないやつした格好を見るに、正規のルートで入国したとも考えづらい。


「ひとまず王都に連れ帰りましょう」


 俺の言葉にアーシュラ様はコクリと頷く。それから数秒、何事かを逡巡したかと思うと、そのまま俺の胸に飛び込んで来た。

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