聖女、君子じゃございません
(紅色か)


 先代の聖女の時、秘宝はエメラルドのような緑色をしていたらしい。恐らく秘宝は、聖女によって、その色を変えるのだろう。
 額の中央を彩る紅い石は、アーシュラ様のシルバーピンクの髪色に良く映える。中身はどうあれ、見た目だけは立派に聖女だ。


「さて、聖女殿。あなたにはこれから、この王宮で生活していただきましょう」


 そう口にしたのは王太子・アレクサンダー殿下だった。
 金髪碧眼、目鼻立ちの整った、女性が夢見る理想の王子様で、物腰も柔らかい。
 ただ、女癖があまり良くないのが玉に瑕で、24歳になった今でも未婚な上、婚約者もいない。本人曰く『王妃に相応しい女性を慎重に選んでいる最中』らしい。

 どうやら殿下はアーシュラ様がお気に召したらしく、恭しく手を握り、キラキラした瞳で彼女を見つめている。


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