聖女、君子じゃございません
「本当は君を、息子の妃にと思っていたんだが……」


 陛下はようやく口を開いたかと思うと、困ったように笑っていた。身内にだけ見せる、どこか砕けた表情。けれど、返答は想像していた通りのものだ。


「どうやら君は、中々に正直な――――頑固な性格をしているようだね」


 陛下の言葉は、そんな風に続く。緊張のあまり、生きた心地がしなかった。


「はい。そのせいでよく『聖女らしくない』とローラン様に叱られます。でもその後すぐに『わたしらしい』って笑って撫でてくれるので、とても嬉しいです」


 それなのに、アーシュラ様の返答は俺の予想の斜め上を行くもので。


「アッ……アーシュラ様! 余計なことを言わんでくださいっ!」


 思わぬ形で自分の癖を暴露されてしまった俺は、顔から火が出そうだった。父とアレクサンダー殿下が腹を抱えんばかりの勢いで笑っている。恥ずかしくて堪らない。


「そうか。あのローランが……」

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