透明な君と、約束を
「俺、このクラスだったんだよね」
「やっぱり芸能クラスでしたか」
「そ。千世は普通クラス。
建物別だから場所決めてこっそり会ったりしてた。
友達以上恋人未満っていうのかな、そんな学生生活は凄く楽しかったよ」
とても懐かしそうな目で鹿島さんは傷がある茶色い机を撫でている。
芸能人に恋愛問題は御法度とはいえ、モデルのような私達にはそこまで事務所からうるさくは言われない。
仕事に大切な時期とは言え高校生、恋の一つや二つ誰だってしたい。
だからこの学校でも隠れて色々なカップルがいるし、もちろん芸能クラスと普通クラスのカップルもいる。
鹿島さん達もその中の一つだったのだろう。
「明日も学校に来ますから安心して下さい」
「そうだな、待たせてごめん。帰ろう」
安心させようと言った言葉に彼は気付いたのか明るい笑顔を見せた。
それでも教室を出るときに名残惜しそうに教室を眺める彼の目が、私には羨ましくも思えた。