透明な君と、約束を
ここは都内のとあるカフェ。
ちょっと路地裏にあるウッディなデザインのお店。
店の前にはウッドデッキの小さなテラス席があり、お店の中はオレンジやグリーンなどポップな色合いのデザインになっている。
白に塗られた可愛い木の椅子、お洒落な小物や植物が至る所に置いてあっていわゆる写真映えする場所だ。
その上期間限定などのスィーツも評判が良く、SNSでよく話題になっていた。
そんな女の子受けするこのお店は、雑誌の撮影でよく使われる場所でもある。
今日の撮影テーマは『カフェで女友達とおしゃべり』。
載る雑誌は中高生向けなので、モデルも中学生から高校生あたりが選ばれる。
お休みの日に女子の友達とウィンドーショッピングをし、その後休憩でお茶をするというものだが、このお店で新しく出来る期間限定デザートを紹介するのが今日の撮影のメインだ。
撮影をする場合、人気店なら客のいない時間になるわけで、だが日の当たる明るい時間に学生達はこの店に行く。
だから閉店後の夜に撮影しては意味が無い。
となると必然的に開店前の時間に行くことになる。
今日は日曜日。
いつもならゆっくり寝ているはずだが仕事となれば別。
朝からゆっくり過ごせるわけも無く、雑誌の入っているビル前に朝の七時集合、それから大きめのバンで移動し八時から撮影スタートというスケジュール。
店は十時開店なので、店に迷惑を掛けないために遅くとも九時半には撤収しなければならない。
「朝からケーキかぁ」
「今ダイエットしてるのにこういう撮影やだよねぇ」
今回一緒に撮影する高校一年生で私と同じ歳の子二人が、準備の邪魔にならないよう店内の隅に立っているのだが先ほどから不満の嵐だ。
「貴女もそう思うでしょ?」
「私、甘い物好きだからありがたいかも」
私の返答が気に食わなかったらしく、女子二人は私を睨み付けた。
まぁここは確かに同意しておく方が良いんだろう。
自分でも可愛くないなという自覚はある。
身長はぐんぐん伸びて今は170センチ。
これは去年学校で調べたもので、今はもう少し伸びているような気がする。
クールビューティーなどと評されることもあるが、黒髪ロング、そして切れ長の目。
態度までこんな風にあまり周りに合わせないとなれば、冷たいと思われても仕方が無い。
だけどこの店はいつも混んでいてなかなか来ることも出来ないので、仕事とは言えそれも期間限定スイーツを食べられるというのは内心ではかなり嬉しかった。
きっと期待して美味しそうに食べている方が、無理にやるよりもやりやすいし読者にも伝わるはず。