透明な君と、約束を
「知ってる?
工藤くんって人気急上昇してるんだよ」
「へー」
「ネット記事の特集があって次にアイドルデビューして欲しい人みたいな投票やってんの。
でそのランキングで工藤くんは凄いことに」
「事務所がやってるの?」
「まさか。
他の雑誌がネットサイトでやってる記事というかその投票ランキング。
そもそもその投票するメンバーにあげられること自体凄いし、それで上位ってのも凄いよ」
私は聞きながらお弁当箱を片付ける。
そんな私にリサはスマートフォンの画面を顔の前に持ってきた。
それは話していたランキング。
未だ投票中で颯真の名前の横にはランクアップなんて星マークとともに、投票した人達の熱いメッセージも表示されていた。
凄い、こんなにも注目を浴びているんだ。
颯真がずっと人一倍練習していたのは知っているからこそ、人気が出るのは当然だろうし私だってとても嬉しい。
「颯真は歌もダンスも上手いからね。
あの子供な性格隠して硬派イメージなんかでやってるからいつかボロが出ないか心配だけど」
「わかってないなぁ、そういう男子が無邪気な子供ぽさを時々見せると女子は弱いんだよ」
「だから通常が子供だからそれは通用しないんじゃって」
「知世は工藤くんが純粋に心配なんだよね、うんうん。酷い女だ」
「なんでそんな意味深な顔しながら最後は責めるの?」
颯真のことでリサが私を茶化すのはいつものことだ。
スマートフォンの記事に視線を落とす。
この様子を見れば、きっともう少しで颯真は本当の夢のスタートに立てるのだろう。
そうすれば今なんかより遙に忙しくなって早々学校にも来られなくなる。
現にそうやって実際の授業に来られず、オンライン授業がメインになった生徒はこのクラスには多数いる。
いつまでも続くと思っていたこと、それが急に変わることがあることを頭では理解しているけれど。
でももしそんな急な出来事が、大切な人の死だったのなら。
千世さんは大切な相手である鹿島さんの死をどう乗り越えたのだろう。
もしかしてまだ引きずっていたりするのだろうか。
ふと気付く。
また考えているのは鹿島さんのことだということに。
私はその考えを頭から消すように頭を振ると、次の授業の準備を始めた。