透明な君と、約束を
「知世、感想は?」
今度は私に感想を振ってくる。
既に表情はいつも通りのようだ。
「良かったです」
「いや、もっとあるだろ」
「人気女優さんだけあって綺麗で演技も素敵でした」
「何の意地悪だ」
ふてくされた鹿島さんにいつも通りだと内心ホッとしながら、私は素直な感想を話した。
それを聞いていそうだろうそうだろうと、鹿島さんは鼻高々に腕を組んでいる。
内心かなり喜んでいるのは口の端が上がっているのでわかるのだが。
「この最終話、俺は告白したいけどためらってる人達の背中を押してあげたいって気持ちで演技したんだ。
誰だって告白するのは怖いし、相手のことを考えずに自分の一方的な感情をぶつけるのは不味いと思う。
だけど、本気で人を好きになるって凄いことだと思うんだよ。
だからこそ後悔しないように、なんて思っていたけどさ、その本人が格好つけて告白を伸ばしたあげく、事故死したら意味ないっての」
苦笑いして鹿島さんは両手を上に伸ばして伸びをした。
ごく普通に話したつもりだろうけど、その内容は重い。
彼の話した言葉の中身は私がどちらも抱えていること。
好きになってしまった相手は幽霊で、好きな人に思いを残して成仏出来ない。
それがわかっているのだから、私の一方的な感情をぶつけるのは間違っている。
これが初めての本気の恋だとしても。
「もしかしたら、俺たち共演していた未来があったのかも知れないな」
頭の後ろに腕を組んで面白そうな顔をしながら私の顔を見る鹿島さんに、私は心を隠して笑う。