透明な君と、約束を
第四章 私を助けてくれた人


あれから二週間近く経つが一切鹿島さんは消える気配がない。
ただ時々彼を見たとき、かなり透けるように見えることが増えた。
彼自身、物に触れないときが増えたと言っている。
テレビのリモコンやタブレットをいじれないのがかなりの苦痛らしい。
やはり千世さんに会ったことで一区切りついたのだろう。

こうなると心の整理がつくまでこういう曖昧な状況が続き、ふと突然完全に透明になってしまうのかも知れない。
その時は成仏したと言うことだが、今度こそ私にはその前兆もわからずにお別れする可能性がある。

前回のことがあり後悔している部分があるから、今まだいてくれるうちに気持ちを伝えようか、そう悩んでいるのも本当。
だけれど勇気が出ない。
やっと千世さんの事で未練がなくなりかけているのに、妹分くらいにしか見ていない私にを言われたら鹿島さんはきっと困るだけだ。
それで残りの時間鹿島さんと居心地の悪い時間を過ごしたくは無い。
告白したのに何も無かったことのように振る舞える、そこまで私には自信も無かった。

ふぅ、とため息をつくとスマートフォンがメッセージの着信で震える。
机の上から取り上げれば相手は颯真。
そこには
『今夜夜九時に例のCM解禁!
事務所公式の動画サイトでも流れるから見ろ!』
という内容だった。
私はすぐに、楽しみ、見るからと返信する。
既読のマークは出たのでそれでいい。
恐らく凄く忙しい中連絡してきてくれたのだろう。

「へぇ、今夜とうとうか。
大規模にやるんだろうな」
「ですから約束」
「両親まだ帰ってないしリビングだから良いだろ。
あと一時間無いから風呂でも入って来いよ」
「なんで鹿島さんが仕切るんですか」
「だってお前見終わって興奮したらあちこち連絡したりするだろ?
両親帰ってくれば両親が先に風呂入るとお前が」
「わかりました!入ります!」

私のいつもの行動や性格を把握され、小舅のように言われるが当たっているので仕方が無い。
どんな風に出来上がっているのか楽しみになりながら浴室に向かった。

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