透明な君と、約束を
「あの人達はうちの事務所の人とこの番組のスタッフさん。
何かあったとき対応して貰えるように後ろで待機して貰ってた。
証人も多ければ多い方が良いし、大人を巻き込むべきだしね。
今回はトモの身の危険がさらされた事だから事務所にはいわなきゃならない。
トモには不利になることは無いよ、それは約束する。
あとは大人達に任せよう」
颯真は連れて行かれる彼女を見ず、私を労るように声をかけた。
中学から一緒で子供っぽいと颯真のことを思っていた。
なのにこういう事をすぐに出来てしまうことで、彼は私の知らないところで何かにあっていたのかもしれないと心配になった。
有名になる事で事務所からこういう場合の対応指示があったのかも知れない。
それにしても落ち着いて対処している姿は、私の知っている颯真に見えなくて戸惑う。
颯真は周囲に人がいないのか確認しているようで、確認し終わると腕を組んで私を見下ろした。
「で、聞きたいことがある、というか俺に話すことあるよな?」
急にいつも通りの颯真になって、私にずい、と迫ってきた。
「何が?」
「俺がなんであの部屋に行ったか疑問持つだろ」
それがどうしてかはなんとなくわかっている。
それは鹿島さんが何かした、それは間違いない。
「俺が収録の準備で席に着いてたら頭に男の声がした。
『知世が部屋に閉じ込められて危ないから身体を貸せ』って。
で、気がついたら知らない部屋にいて、トモが俺の手を取って走ってた。
あれは一体どう言うことだ?」
そうか、鹿島さんは物が触れなくなったから颯真の身体を借りたのか。
完全に乗りうつったってやつじゃない。
そんなことが出来るなんて知らなかった。
しかしどう説明すれば良いのだろう。
見えもしない幽霊の話しをして颯真は納得するだろうか。
うーん、と悩んでいたら肩を強く掴まれ揺すぶられる。