透明な君と、約束を
「トモは女なんだからその辺わきまえて行動してるんですよね?」
「シテルシテル」
「あと今後勝手に人の身体乗っ取らないでくれます?」
「ガンバル」
「なんで颯真と鹿島さんが仕切ってるようになるんですか」
ムッとしている颯真に鹿島さんは軽い声で返す。
目の前に取り憑かれている本人無視で話を進めないで欲しい。
まぁ、と颯真が頭をガシガシと掻きながら声を出して、
「そのおかげでトモを助けられたわけだから今回の乗っ取りは許すよ。
けど早めに成仏して下さい、トモが迷惑です」
びし、と颯真が鹿島さんに向けて指を指せば、鹿島さんは余裕の表情を浮かべる。
「それまでは俺が一番知世の側で、それも二十四時間いられるんだよねぇ」
「ハァ?!」
飄々と鹿島さんが言うことに颯真が苛立っている。
私はよく意味がわからないものの、まぁまぁと二人をなだめながら、
「ちゃんと言ってなかった。
二人のおかげで助かりました、ありがとうございます」
そういって二人に向かい頭を下げた。
顔を上げると颯真は照れたような顔で頬を掻いているし、鹿島さんは優しく微笑んでした。
工藤くん、どこー?という女性スタッフの声が聞こえ、颯真が今行きます!と大きな声で返事をする。
「まだ俺仕事だから。
その後の状況わかったら連絡する。
そっちも報告ちゃんとこっちにしろよ」
「わかった。
お仕事頑張って。そしてありがとうね」
颯真は硬派とは違ういつも通りの可愛い笑顔で手を振ると、走ってその場を去った。
スタジオを出る際に、さっきいたスタッフさんの一人が私の鞄を渡してくれた。
彼女が持っていたのをとってきてくれたらしい。
私はお礼を言ってテレビ局を出た。
「いや、ほんとあいついてくれて助かった」
鹿島さんはため息をつくように肩を下げる。
きっと自分が取り憑いて身体を貸してくれる相手を捜し回っていたのだろう。
幽霊が取り憑いていることでこんなにありがたいと思うとは。
でもそれは鹿島さんだったからで、ここにいたのが颯真だったからだ。
「ありがとうございます」
再度私が礼を言うと、良いって事よと鹿島さんは笑って私の頭を無造作に撫でた。