ラブアド〜シオリの物語〜
人にはそれぞれ過去があり、出会いは互いの今と今が交差した瞬間だ……。

人と付き合っていくという事は、その人と未来を築いていくという事だと思う……。

だから、その人がどんな過去を持っていようと、そんな事は関係無い……。

俺はずっとそう思っていたし、今でもそう思っている……。

だが、人の過去に触れた時、どう感じるかは別次元だ……。

これまで俺が愛した女達は皆、切ない過去を持っていた……。

自分には価値が無いと思い、何度も自殺未遂を繰り返した女……。

好きな相手から女として見てもらえず、酒と暴力に明け暮れていた女……。

生きて行く為に、自らの身体を男に売って生きてきた女……。

過去に付き合ってきた女達は皆、俺よりも年上だった事もあり、ガキだった俺に“女”というものを教えてくれた……。

だが、今思えば、彼女達は俺に“女との付き合い方”を教えてくれた先生であって、本当の恋人ではなかったのかもしれない……。

だから、俺と別れて別の道を歩んで行ったのかもしれない……。

俺の女はどこにいるんだ……?

ずっとそう考えていた……。

シオリと出会ってからもしばらくはその想いは消えなかった……。

だけど、シオリの過去を聞いてから、その想いは少しずつ薄れていくことになる……。

シオリの過去はこれまで触れた中で、一番俺の心を奮わせた……。


俺が「内藤さん」から「シオリちゃん」と呼び方を変えるまでそんなに時間は掛からなかった……。

だが、そこからが永い道のりだった……。

メルアドを交換したものの、俺とシオリは極普通のバイト仲間として接していた。

バイト中は楽しくおしゃべりする事はあっても、それ以上は何もなかった。

二人共付き合っていた相手がいたし、得に意識する事もなく、お互いバイト仲間としてしか見ていなかった……。

この頃は、得にシオリにプライベートな質問をする事もなかったし、もし聞いたとしても、シオリも答えなかっただろう……。

俺達の関係はそんな有り触れた関係だった……。

俺とシオリが関係を深めていくのは、まだまだ先の話だった……。

【続く】



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