ラブアド〜シオリの物語〜
今だから言える……。

俺はシオリを自分の女にしたい!と想っていた……。

そう思うようになったのはいつからだろう……。

だけどそう気付いた時、俺は自分の気持ちに蓋をした……。

シオリが他の男を好きだって知っていたから……。

俺に気持ちが無いって知っていたから……。



あの日の歓迎会は……本当は君ともっと仲良くなりたくて開いたのかもしれないね……。

だけど、予想してたのと全然違うただの飲み会になっちゃったよね……。

結局、あの日はろくに君と話もできなかった……。

デリカシーの無い店長のせいで、君には余計につまらない想いをさせちゃったね……。

ただでさえ君はプライベートで辛い想いをしてたのに……。

俺にとって、あの日の歓迎会は何でもないただの飲み会だった……。

シオリは彼氏に呼び出され、雨の中先に帰って行った……。

この時俺は、シオリがどんな気持ちで帰ったのか、まるで解っていなかった……。



俺はある時期、好きな女が出来ても、心の底から惚れないようにしてきた……。

それはもう傷付きたくなかったからだ……。

心底惚れた女に別れを告げられる痛み……。

裏切られる悲しみ……。

騙される怒り……。

もう、そんな気持ちを味わいたくなかった……。

だから、本気にならないように努めた……。

表面だけの軽い関係……。

本当の気持ちなんて関係ない……。

その場のノリと、性欲だけの関係……。

だけど、それは大きな間違いだった……。

自分が本気にならなければ、相手も本気にならない……。

自分が心を開かなければ、相手も心を開いてくれない……。

そんなの本当の恋愛じゃない……。

そこに真実の愛は無い……。

人は自分の気持ちは解っているが、相手の気持ちはまるで解っていない……。

いや、解ろうともしない……。

この時、俺はシオリが今までどんな恋愛をしてきたのか考えもしなかった……。

男と女の違いはあれ、俺とシオリには共通の想いがあった……。


【続く】


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