キスのその後に
2人は飲み物を手に、広場のベンチに座った。

今年から始まったこの公園のイルミネーションイベントは、テレビで紹介されたこともあって、かなりの人で賑わっている。

行き交う人々と無数のキラキラした光を、杏奈は無言で眺めた。
坂井も、まっすぐ前を見たままコーヒーをすすっている。

杏奈は坂井の横顔が好きだった。鼻筋が通っていて、とてもバランスがいい横顔。無表情で何を考えているのかわからない横顔。 
それでいて、笑うと一気に顔がくしゃくしゃになる。

あぁ。
やっぱり好き。

杏奈は堪えられなくなった。

「ねぇ坂井くん。手、つないでもいい?」
杏奈は思い切って左手を出した。

坂井は一瞬驚いたようだったが、すぐに優しい顔になり、右手を差し出してきた。

坂井の長い指に自分の指を絡ませ、ギュッと握った。
「恋人つなぎ。」
「…なんてね。」
そう言って笑ってみたものの、何だか気まずくなって顔を伏せた。

じわじわと顔が熱くなる。
こんな、いかにも女子っぽい自分を見て、坂井はどう思うだろう。
結局、他の女と同じだと幻滅されるだろうか。

握った手が汗ばんでくるのがわかる。

…恥ずかしい。

手を離そうかと思ったその時、坂井が繋いでいる手を引き寄せた。

坂井の顔が近づく。

唇と唇が触れた。

頭が真っ白になる。

坂井とキスをしている?
これは現実?

抵抗しようとしたが、坂井は杏奈の背中に手を回してさらに体を抱き寄せた。

一気に体が固くなる。

坂井のキスは終わらない。

角度を変えて、強さを変えて、杏奈の唇に吸い付いてくる。

興奮と喜びと、ほんの少しの惨めさを感じながら、杏奈は坂井のキスを受け入れた。
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