キスのその後に
8.嶋谷圭介
「えー、只今ご紹介に預かりました本郷恭一と申します。嶋谷圭介くんとは同じ営業部の上司と部下という関係でして…。」
お決まりのスピーチを聞きながら、圭介はチャペルでのことを思い返していた。
最後の誓いのキス…あの時の玲子に少し恐怖を感じた。
玲子はなぜか圭介の唇を噛んだ。しかも皮がめくれるほどの強さで。
そしてその後に発した「愛してる」という言葉には、心がなかった。
何かあったのかといろいろ思い返してみたが、特に思い当たらない。
あるとしたら1つだけ…。
いや、でもあれは玲子が知っているはずのないことだ。
隣を見ると、玲子は本郷のスピーチを笑顔で聞いている。
「本郷さん、かっこいいよな。仕事もできる人だし、俺の憧れなんだ。」
圭介は思い切って話しかけてみた。
「へぇ。」
そっけない返事。
それでも玲子は笑顔を崩さない。
「でも本郷さん、ちょっと前に奥さん亡くしててさ。大変だよな、子供もいるのに男1人でさ。」
「そう、苦労されてるんだね。」
本郷のプライベートまで話したというのに、イマイチの反応。
圭介は、目の前のグラスに注がれたシャンパンを一気に飲み干した。
何なんだ。明らかに今朝までの玲子とは違う。
まさか…バレた?
「圭介くん、玲子さん。笑顔の絶えない幸せな家庭を築いてください。」
本郷が軽くお辞儀をして、席へ戻っていく。
「それでは皆様、しばしご歓談をお楽しみください。」
司会の女性の言葉を合図に、会場は楽しそうな話し声と食器の音で賑やかさを増していく。
圭介は会場全体を見渡した。
手前のテーブルには自分と玲子の家族や親戚たち。
中程のテーブルには、お互いの会社関係。
そしてその後ろには、友人たちのテーブルがある。
圭介の視線が止まった。
圭介から見て、一番右奥のテーブル。
そこに新藤真由がいた。
真由は、玲子の高校時代からの友人だ。
そしてついこの間まで、自分の浮気相手でもあった女性。
真由とは、玲子と付き合うようになってから知り合った。
何度か一緒に遊ぶうちに2人で会うことも多くなり、深い関係になった。
その関係は1年程続いたが、お互いの結婚を機に終わらせた。
もちろん玲子はそのことを知らない。
そう思っていたのだが…?
お決まりのスピーチを聞きながら、圭介はチャペルでのことを思い返していた。
最後の誓いのキス…あの時の玲子に少し恐怖を感じた。
玲子はなぜか圭介の唇を噛んだ。しかも皮がめくれるほどの強さで。
そしてその後に発した「愛してる」という言葉には、心がなかった。
何かあったのかといろいろ思い返してみたが、特に思い当たらない。
あるとしたら1つだけ…。
いや、でもあれは玲子が知っているはずのないことだ。
隣を見ると、玲子は本郷のスピーチを笑顔で聞いている。
「本郷さん、かっこいいよな。仕事もできる人だし、俺の憧れなんだ。」
圭介は思い切って話しかけてみた。
「へぇ。」
そっけない返事。
それでも玲子は笑顔を崩さない。
「でも本郷さん、ちょっと前に奥さん亡くしててさ。大変だよな、子供もいるのに男1人でさ。」
「そう、苦労されてるんだね。」
本郷のプライベートまで話したというのに、イマイチの反応。
圭介は、目の前のグラスに注がれたシャンパンを一気に飲み干した。
何なんだ。明らかに今朝までの玲子とは違う。
まさか…バレた?
「圭介くん、玲子さん。笑顔の絶えない幸せな家庭を築いてください。」
本郷が軽くお辞儀をして、席へ戻っていく。
「それでは皆様、しばしご歓談をお楽しみください。」
司会の女性の言葉を合図に、会場は楽しそうな話し声と食器の音で賑やかさを増していく。
圭介は会場全体を見渡した。
手前のテーブルには自分と玲子の家族や親戚たち。
中程のテーブルには、お互いの会社関係。
そしてその後ろには、友人たちのテーブルがある。
圭介の視線が止まった。
圭介から見て、一番右奥のテーブル。
そこに新藤真由がいた。
真由は、玲子の高校時代からの友人だ。
そしてついこの間まで、自分の浮気相手でもあった女性。
真由とは、玲子と付き合うようになってから知り合った。
何度か一緒に遊ぶうちに2人で会うことも多くなり、深い関係になった。
その関係は1年程続いたが、お互いの結婚を機に終わらせた。
もちろん玲子はそのことを知らない。
そう思っていたのだが…?