キスのその後に

圭介の視線に気づいたのか、真由がこちらに向かって微笑みながら会釈をした。

慌てて視線をそらす。

マズい。見られた？

恐る恐る横にいる玲子を見ると、高校生の従兄妹たちに囲まれて写真を撮ろうとしているところだった。

圭介はホッと胸を撫で下ろした。

「圭介さんも一緒に入ってくださいよ。」
玲子の従妹の高澤杏奈(たかさわあんな)が声を掛けてきた。
オリエンタルな顔立ちのとても可愛い女の子だ。

「あぁ…じゃあ。」
圭介は玲子の方に体を寄せた。

その瞬間、玲子が体を引いた気がしたが…気のせいだと言い聞かせる。

「撮りますねー。」
プランナーの木村がスマホを構える。
杏奈のスマホだろうか。ショッキングピンクのカバーが目を引く。

「玲ちゃん、いいなー。私も圭介さんみたいな人と結婚したいなー。」
写真を撮り終えると、杏奈が言った。

「杏奈ちゃんは可愛いから、圭介なんかよりもっといい人見つけられるよ。」
玲子が返す。

…圭介なんかより？
何だろう。棘があるような気がする。

「杏奈ちゃん、今彼氏とかは？」
圭介は話題の中心を変えようと試みた。

「んー。まぁ好きな人はいるけど…。いい感じのような、そうでもないような？」
杏奈が笑う。

「なんか楽しそう。私はもう、そういう頃に戻れないからなー。」
玲子がちらりと圭介を見る。

…試み失敗。
何だか気まずい。

「次、僕のもお願いします。」
杏奈の隣りで会話に入れずにいた男の子が、自分のスマホをプランナーの木村に差し出した。
玲子の従弟の小山諒太(こやまりょうた)である。

「諒くんは？彼女とかできた？」
玲子が言うと、諒太は苦笑いをした。
「いや…僕は…。」

「同級生の男子が好きなんだって。」
杏奈が周りに聞こえないように、小声で言う。

「え、そうなの？」
「うん、まぁ…。」

特に困る様子もなく、諒太は少し照れながらも素直に認めた。
もはや隠す事柄でもないらしい。

「はい、じゃあもう一回、こっち向いてくださーい。」
プランナーの木村が手を上げる。

４人は体を寄せて、笑った。