キスのその後に
学校で見る藤間は、いつも表情がない。笑った顔も見たことがない。
少し上から冷たい目で見下ろしてくる。

そんな藤間なのに、寝顔はまるで少年のようにあどけない。何か夢でも見ているのか、口元に笑みを浮かべている。

「かわいい…。」
諒太は小さく呟いた。

そっと顔を近づけて、藤間の唇に自分の唇を重ねる。

なんて温かくて、なんて柔らかい唇。

体の奥からこみ上げてくるゾクゾクする感覚を感じながら、諒太は唇を離した。

藤間は目を開けない。
規則正しい寝息を立てている。

諒太は荷物を鞄に入れると部屋を出た。藤間の家を後にして、バス停に向かう。

歩きながら、ふふっと笑みがこぼれた。

もしかすると明日、藤間はひどく怒っているかもしれない。黙って帰ってしまったんだから。

しかしそれでもいい。

あの温かい唇から発せられる言葉なら、侮蔑でも何でも、いくらでも受け止められる。むしろ今まで以上に、自分を蔑んでほしいとさえ思う。

自分に向けられる藤間の冷たい表情と残酷な言葉を想像して、鳥肌が立った。

藤間に支配されていたい。

これからもずっと。

諒太は体中から湧き上がる高揚感にうっとりしながら、暮れかかった空を見上げた。
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