スパダリ御曹司に年下看板娘は、溺愛で包囲されました。

◇老舗茶屋の娘



 暦は六月、新茶の季節がやって来たので新茶と書かれているものを店頭に並べている。

 店内にはお茶のいい香りが漂っている。


「すずちゃん、ご機嫌ねぇ〜ご機嫌はいいけどこっち手伝って」

「うん、分かってるよー私、その作業好きなんだよね」


 おばあちゃんに言われて彼女がいる場所に行くと茶葉をスコップのようなもので救って光と空気を通さないアルミの袋で袋詰めを始めていたため私も同じ作業をする。

 私、藤野(ふじの)純鈴(すず)は祖父母が営んでいるこの老舗茶屋【ふじの】の娘。高校卒業したのはほんの三ヶ月ほど前の話で、今は【ふじの】で家業手伝いをしている。
 今、袋詰め作業をしている茶葉は四月中旬から五月上旬ごろに摘んだ一番茶。

 一番茶は、芽が柔らかくて香りや栄養分が詰まっているため新芽を確認しながら丁寧に手で摘んだ生葉から作られる。
 そして摘んだ生葉を蒸気で蒸し、乾燥した熱風で適度に摩擦・圧迫しながら揉んだ後にふるい分けをし形を整えながら焙煎をする――それが終わったのが今袋詰めをしている茶葉だ。


< 2 / 49 >

この作品をシェア

pagetop