その溺愛は後出し不可です!!
「うわっ!!すごい熱!!」
果歩は思わず手で目の前の空気を仰いだ。
まるで焚き火が間近にあるような暑さだった。
サーバールームには窓がない。空調が効かないとなるとサーバー本体が発する排気熱は室内にこもったままになってしまう。
これが熱暴走の原因だろう。
とりあえず廊下側のドアを開けてはみたが、温度はすぐに下がりそうもない。
「ジロー、サイトにメンテナンスの案内をだせ。サテライトにある残りのサーバーでメイン機能を先に復旧させてくれ。できるな?」
昴は予備機を使って事態の収拾を図ろうとしていた。
いざという時に備えサテライトオフィスにもサーバーを分散させておいたことが功を奏す。
「誰に言ってんだよ。宵っ張りのエンジニア連中に片っ端から連絡しといてよかったぜ」
昴はスーツを脱ぎ、ネクタイを外した。
「全サービスを動かすのに必要なサーバーの台数は?」
「そうだな……。動作は遅くなるが二十台もあれば充分だ」
「わかった。二十台だけラックから外してエアコンが使えるオフィスに移す。そっちの対応が終わったら手伝ってくれ」
「おう」
篝は返事をする間も惜しむようにノートパソコンのキーボードを叩き出した。
「梅木、節電対策でオフィスにサーキューレーター置いてたよな?予備も含めて全台集めてくれ」
「はい!!」
果歩は走りにくいヒールのある靴を脱ぎ捨てると、昴の指示通りオフィスへと走り出した。