その溺愛は後出し不可です!!
昴の指揮の元、次々とオフィスにサーバーを運び込まれて行く。
障害復旧は時間との勝負だ。
システムの安定稼働は至上命題、顧客の満足度に直結する。
デスクの上に並べられたサーバーは空調を設定温度ギリギリまで下げ、集めたサーキュレーターで風を当てて冷やしていく。
冷やし始めて二時間ほどが経つと、熱暴走から復旧したサーバーが立ち上がり始めた。
程なくして篝とリモートで作業するエンジニア達のおかげでWOnderは再びサービスを開始することができた。
「よし、概ね問題ないだろう」
篝がOKサインを出した時には、時計は既に深夜の三時を指していた。
「朝までに復旧して良かったな……」
肉体労働に駆け回った昴と果歩はすっかりくたびれ、揃って床に座り込んだ。
「お疲れ〜。無事復旧できた?」
「おせーよ。終わったころにくるんじゃねえ!!おまけに酒臭いわ!!」
タイミングを見計らったように全てが終わった頃に現れた風間に向かって篝は持っていたケーブルを投げつけた。
「仕方ないじゃん。さっきまで接待だったんだもん」
思いがけず創業メンバー三人が勢揃いし、果歩は途端に嬉しくなった。
和気藹々とした雰囲気は残しつつも、決して馴れ合わないのが彼らのポリシーだ。
先ほど障害対応を終えたばかりにも関わらず、三人は既に現状の改善点を話し合っている。
会社が大きくなっても良いものを世に出したいという根っこの部分は皆変わっていない。
学生時代の情熱と志をそのまま持ち続けるなんて凄いことだと思っているし、一緒に働けて光栄に思う。
「何をそんなに嬉しそうにしているんだ?」
議論する三人をニマニマしながら眺めていたことを昴に見咎められ、果歩は慌てて誤魔化した。
「いいえ!!なんでもありません」
「ま、今日のところは峠も越えたし俺が残るから昴とウメキチは帰っていーぞ」
「……ねえ、僕は?」
「遅れてきた分、しっかり働け」
首根っこを掴まれた風間は「ジローと二人なんて嫌だーー!!」と叫びながら、サーバールームへと連れて行かれた。