その溺愛は後出し不可です!!
「何やってんだよ。ベッドはこっちだぞ」
昴が寝室の扉を開けると、セミダブルのベッドが堂々と現れた。寝乱れたままのシーツを見て、果歩はゴクリと唾を飲み込んだ。
「わ、私がベッドで寝たら、社長はどこに寝るんですか?」
「ベッドで寝るけど?」
昴は素知らぬ顔でベッドに横になると、己の隣をポンポンと叩いた。
隣で寝ろということだろうか。
これには果歩もたじろいだ。
昴くんの隣で寝るなんて完全に想定外だったもの!!
「狭くて悪いな」
「あの……私……」
やっぱりソファで寝ますと言いかける果歩に昴は昔を懐かしむように語りかける。
「昔はよく一緒に寝てたもんな。狭い賃貸アパートで四人でぎゅうぎゅうになってさ。よくやったもんだよな」
四人で雑魚寝するのと二人きりでセミダブルのベッドで寝るのはまるで違う。
そんな当たり前の主張は昴の次の行動であっという間に消し飛ぶ。
「おいで、梅木」
昴は舞踏会で手を取る王子様のように扉の横に立つ果歩に向かって手を差し伸べた。
抗いがたい魅力的な誘惑に果歩の思考力は一気に低下した。
ああ、もう。昴くんには敵わないなあ……。
顔も身体も人並みの果歩をお姫様気分にさせてくれるのは世界広しといえども昴だけだ。
果歩は意を決して昴の手を取ると、ベッドの中にゆっくりと身体を滑り込ませた。