その溺愛は後出し不可です!!
「梅木?寝たのか?」
「おきて……まふよ……」
気持ち良すぎて瞼が重くなってはいるが、まだ寝ていない。……多分。
ここで寝てしまってはもったいない気がした。昴のベッドに招かれるなんて今後二度と起こらないかもしれない。
「本当に起きてるのか?」
「ふぁい……」
よくよく考えてみれば接待でお酒を飲んだ後に、廊下を全力疾走して重いサーバーをいくつも運んでいた。
クタクタの身体にこの沈むようなマットレス、相乗効果は半端ない。
意識が遠のきそうになった時、ギシリとスプリングが軋む。
うっすら目を開くと、ちょっと怒ったように眉をしかめた昴が果歩にのしかかっていた。
「ったく。ちょっと油断しすぎだぞ?相手が俺なら手を出さないとでも思っているのか?」
「いいでふよ……」
昴は驚いたように目を瞬かせた。
「本当にいいんだな?」
「ふふっ。いっぱいしていいよ……」
果歩はにへらと力なく笑い、昴をぎゅうっと抱きしめた。
今日の昴はなんだか昴らしくない。
さっきの言い方だとまるで果歩に手を出したいみたいではないか。
「後で覚えてないって言われたら泣くからな?」
果歩の記憶はそこでぷつりと途切れた。
明け方、果歩はとても幸せな夢を見た。
昴に好きだと何度も耳元で囁かれる夢だ。
唇を軽く触れ合わせるだけの焦ったいキスと、舌を絡ませ合う激しいキスを何度も交互に繰り返す。
くすぐったさと焦ったさの中に一滴の切なさが混じり溶けていく。
もっと、もっととねだると首筋やうなじにもキスが降ってくる。
都合の良い夢の心地よさに果歩は次第に溺れていった。
「おやすみ、果歩」
ああ、夢なら覚めないで欲しい……。