その溺愛は後出し不可です!!
サイドテーブルに置いたスマホからけたたましいアラーム音が鳴り響く。
カーテンを開け放った窓からは燦々と陽が降り注ぎ、瞼をチクチクと刺激する。
いつもの寝起きしている自分の部屋とは異なる景色に、果歩は何度も目を擦った。
やがて昴の部屋に泊まったことを思い出し、ベッドから跳ね起きる。
「起きたか?」
「……おはよう……ございます」
寝室の入口に立つ昴から声を掛けられ、果歩は即座にベッドの上に正座した。
昴より後に起きるなんて、油断した。完全に寝坊だ。
果歩と同じように深夜まで働いていたというのに昴は寝不足をおくびにも出さない。
先に起きて身支度を終えてなお、寝過ごさないように果歩を起こす余裕まである。
「シャワー浴びるか?下のコンビニが開いていたから必要そうな物は先に買っておいたぞ」
差し出されたレジ袋の中には女性物のシャンプーや、メイク落としやらが入っていて泊まり明けの女性にとっては至れり尽せりだった。
「あ、ありがとうございます……」
「シャワールームは洗面所の隣な?」
寝癖を手櫛でなおす果歩を見て昴はクスリと笑った。
違う違う。思い出すな……!!
昨夜見た恐ろしく生々しい煩悩まみれの夢を思い出し、果歩は脱衣所で一人ジタバタした。
確かにここ数年彼氏と呼べる人はいなかったけど、まさか昴相手にあんなあられもない夢を見るなんて。
薄くて艶のある唇が強引に果歩の唇をこじ開け、胸の大きくはない膨らみを……想像するだけで頭が蕩けそう。
毎日顔を合わせる上司を妄想の対象にするなんて罪悪感しかない。
シャワー、そうだ。シャワーを浴びよう。
羞恥心を洗い流すように手早くシャワーと身支度を済ませリビングに戻る。
しかし、リビングのどこにも昴の姿はなかった。