その溺愛は後出し不可です!!
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カードキーの意味を問いただそうにも、こういう日に限って昴とは別行動だ。
経営陣が三人いるのに対し、秘書は果歩一人きりだ。時と場合によっては昴以外の人へと帯同を余儀なくされる。
今日はまさしくその日だった。
昴は風間と朝から商談に出かけ、果歩は篝と二人で市場調査に赴く。
直帰しようと目論んでいたが、預かっているカードキーを返さないと、昴が家に入れないかもしれない。それは困る。
サテライトに寄るという篝と別れた果歩は部屋で待っていろという指示通り、昴の部屋を訪れた。
専用のスリットにカードを差し込むと問題なく鍵が開いた。……開いてしまった。
すっかり手持ち無沙汰の果歩はとりあえずソファに座り昴の帰りを待った。
一人になると今朝のプロポーズの事を思い出してしまう。
たったの数秒で果歩の世界は一変してしまった。昴のプロポーズはそれくらい衝撃的だった。
いっそのこと冗談だって言って欲しい。
果歩の願いも虚しく、篝に対して結婚を公言した昴は本気のようだ。
ジャンケンに負けたから結婚することになったなんて誰が信じるだろう。
果歩ははあっと大きなため息をついた。
やることもないので背もたれに置いてあったクリーニング済みの衣類を片付け、読みかけの技術書を棚にしまい、溜まっていた洗濯物を洗ってクローゼットにしまった。
今はひたすら無心になりたかった。
片付けをしていると気が紛れて一石二鳥だった。
一通り片付け終えるとふうっと一息つく。