その溺愛は後出し不可です!!
タクシーに乗り、閉店ギリギリにジュエリーショップに駆け込む。
昴は果歩の心中などお構いなしにキラキラと輝く指輪を次々ショーケースから出しもらっては左手の薬指に嵌めていく。
「まるで果歩のために作られたみたいだな?」
「とてもお似合いですね」
昴と店員の大袈裟な褒め言葉に頬が引き攣る。
似合っているとかいないとかどうでも最早どうでもいい。しかし、ジャンケンに負けた果歩に拒否権もなければ、選択権もない。
でも、本当に綺麗……。
大粒のダイアモンドとアクセントの小粒のピンクダイアモンドが散りばめられた指輪は本当に素敵だった。
こんな状況でなければいつまでだって眺めていられる。
「似合うよ」
「そんなこと……」
「すみません。これ、買います」
昴は値段を見ようともせずに、即購入を決めた。しかも、似合っているからこのままつけて帰ると主張して憚らない。
微笑ましい様子に店員が果歩にそっと耳打ちした。
「とっても素敵な婚約者様ですね」
果歩は心痛で今にも吐き出しそうだった。
結婚するつもりはない、とはとても言い出せる雰囲気ではない。
目的を達成し再びタクシーに乗り込む際には、すっかり疲労困憊で息も絶え絶えになっていた。