その溺愛は後出し不可です!!
「ったく。どうやったらそんなおかしな勘違いをするんだ?頑張る必要なんてない。俺はとっくの昔に果歩に惚れてる」
昴は果歩の元は一歩踏み出すと、両手で顔を包んだ。親指で涙を拭い、果歩を慰めるように額にキスをする。
「す、昴くん……?」
果歩は戸惑うばかりだった。これから昴に好きになってもらわなきゃと随分気負っていたのに随分あっさり梯子を外されてしまった。
「だからあの日、果歩が俺と同じ気持ちだって分かってすごく嬉しかった。果歩はてっきりジローのことが好きなのかと思ってたし……」
「ちょ、ちょっと待って!!何の話?」
あの日だとか、同じ気持ちだとか意味の分からない言葉が盛り沢山で混乱してくる。詳しい説明を求めると、昴はなんとも言えない渋い表情になった。
「だから、果歩がうちに泊まった夜のことだろ。好きだと伝えてキスをしたら、私もって応えてくれただろ?」
「覚えてない……」
「嘘だろ……?」
記憶を手繰り寄せてみても何も見つからない。あの時、果歩は疲労と空腹と眠気で限界を迎えていた。
唯一覚えていることは昴が登場したあられもないもない夢を見たことだ。つまり、あれは夢ではなく現実だったということ?
「なあ、果歩。俺の純情を弄んだ罪は重いよ」
昴の指が唇をゆっくりなぞっていく。果歩の身体が小さく震えた。
昴の瞳には確かに欲情の炎が灯っていた。