その溺愛は後出し不可です!!
「おはよう、梅木さん」
「おはようございます、副社長」
翌朝、果歩は出社するなり副社長の風間友成から声を掛けられた。
風間は昴の大学時代からの友人でもあり、REALNavigatorの創業メンバー三人の内の一人である。
昴を含めた創業メンバー三人が開発・実用化に成功した汎用AI「WOnder」は今や、多種多様な企業に採用されている。
賃貸アパートの一室から始まったREAL Navigatorが都内の一等地に本社を構えるまでに成長を遂げることが出来たのは、昴はもちろん風間の貢献によるものも大きい。
「今夜、よろしくね」
「はい。わかっております」
今夜は前々から接待のお供を仰せつかっていた。相手は都内にいくつも飲食店を経営しているやり手の経営者だ。
「ありがと。じゃあ、またあとで」
企業として急成長を遂げた現在、賃貸アパートで開発をしていた当時のことを知る社員は今や果歩だけだ。
古株同士の気安い会話は果歩の心をふっと和ませた。
果歩は意気揚々とオフィスに一角に設けられたガラス張りの社長室の扉を開けた。
「社長、おはようございます」
昴は果歩より一足早く出社しており、先に仕事を始めていた。
「昨日はちゃんと眠れたか?」
「はい、お陰様で」
「あまり無理するなよ?」
昴はわざわざ立ち上がると、果歩の顔色を確かめるように頬を軽く撫でてみせた。
それから、昨夜果歩から取り上げたカタログを返却した。
果歩のデスクの上には、プリントアウトされた成果物がご丁寧に置いてある。
忙しい合間を縫い、果歩の仕事まで手伝ってくれるなんて、昴の超人ぶりには時々溜息が出る。