その溺愛は後出し不可です!!
「遅いぞ、二人とも!!」
正面エントランスにほぼ同時に到着した昴と果歩は血相を変えた篝に怒鳴られた。
篝皇治郎は風間と同じREALNavigatorの創業メンバーの一人である。
今は最高技術責任者(CTO)として、WOnderの開発と運用の一切を取り仕切っている。
昴と果歩は五階にあるオフィスへと向かう道すがら、篝から今回の緊急事態の全容について説明を受けた。
「サーバールームに置いてたサーバーが一台残らず熱暴走で停止してる」
「はあ!?いつも空調を効かせてるだろ!?」
「さっき見に行ったけど吹き出し口から全く風の音がしなかった。空調機が壊れてんじゃねーの?何回スイッチ押しても動かねーし」
篝は苛立ちを抑えきれずに頭を何度も掻きむしった。
プログラミングには疎い果歩だがこれが大変な異常事態だということはわかる。
WOnderを動かしているサーバーが動かなければ顧客に提供しているシステムの殆どにエラーが発生してしまう。
「とにかく今はサーバーの温度を下げねーと……。サーバーが立ち上がんなきゃサービス再開できねーぞ」
エレベーターが五階に到着すると、三人はまず同じフロアにあるサーバールームに向かった。