円満夫婦ではなかったので
他に何かないかと捜していると封筒が見つかった。
封はされてなく中には、リーフレットと同じ旅館名が記載された領収書が入っていた。内容を確認する。
【撫子、一泊二名 十二万五千円】
リーフレットに記載してある宿泊料よりも高額で、園香は僅かに目を瞠る。
(日付は?……六月三十日?)
園香の仕事の件で激しく言い争ってすぐの頃だ。
(怒って出て行ったまま帰らないと思ったら、旅行に行っていたなんてね)
他に気になるものは見当たらないのを確認してから瑞記の部屋を出る。
自室で問題の旅館を検索してみると、有名な宿のようですぐに見つけられた。
領収書に記載されていた“撫子”は客室名のようだ。
セミスイートで、写真によると樹々に囲まれた隠家のような離れに、ふたりで入っても余裕がある大きな露天風呂がついている。日常から離れた時間を過ごすのにぴったりな環境だ。
園香は無意識に眉間にシワを寄せる。
(どう見ても同僚と過ごす部屋じゃないでしょ)
希咲との不倫の可能性が増してきた。
(私には文句ばかり言って、自分は恋人と贅沢に楽しんでいたってこと?)
今更嫉妬などしないが、怒りは湧いて来る。