円満夫婦ではなかったので
義家族との食事会から十日が過ぎた。
園香は仕事の傍ら離婚に向けて動いているが、残念ながら何も進展がない。
しかしもどかしい日が経つにつれ、二人の不倫は確定だと強く感じるようになっていた。
そう思うのは瑞記の態度にある。
普段は園香に対してすぐに怒り、感情的に喚きたてるのに、希咲に関しては意外に口が固く隙を見せない。
決して不利になるような発言をしないのだ。
それは希咲を守りたい自発的な気持ちからなのか、または彼女から釘を差されているのか。
分からないけれど、瑞紀らしくない慎重な言動が、秘密があるんだと示していると感じるのだ。
いずれにしろこのままでは解決しそうにないので、園香も行動を変えなくてはいけない。
そんな風に次の行動を考えていたとき、園香の元に思いがけない人物が訪ねてきた。
ソラオカ家具店横浜ショールームの応接室。
そこで待つのは、KAGURAのCEOである名木沢清隆。
彼は事前連絡なしにやって来て、受付で園香と話がしたいと申し出たそうだ。
ショールームでは彼の会社のロボットを使っているから全く無関係と言う訳ではないが、園香は彼と面識がなく、ロボットの採用も運用も担当業務ではない。
関わりがあるとしたらプライベートの方。
名希沢希咲つながりだ。
もしかして妻の不倫に感づいて、不倫相手の配偶者である園香を訪ねて来たのだろうか。
そんなことを考えながら警戒しつつ応接室のドアを開けた園香に、清隆は笑顔を向けた。