円満夫婦ではなかったので
「今月の帰宅は三日か……」

園香は日記をつけながら呟いた。八月に入っていからの瑞記の帰宅日数だ。

「今日は二十日だから、だいたい一週間に一度くらいの間隔?」

帰宅したからと言って何かする訳じゃない。けれど定期的に帰って来て園香と顔を合わす。

そのときの瑞記の様子から、なんとなく観察されているような気がする。実際彼は妻が在宅しているか確認しているのだろうか。


これと言って特別な出来事が起きていない為、淡々とした内容の日記の記入を終えパタンと閉じる。

日記や家計簿は続かないタイプだったが、今は離婚という目的があるからか続いている。

自分の気持を綴るというより、瑞記行動観察だ。

続いて財産分与に備えて財産の整理をする。大した資産はないが、きっちりやるように弁護士に言われている。

銀行口座は瑞記に生活費を振り込んで貰っているものや、給料振込用、貯金用などいくつかある。確認しているうちに、一番古い口座の通帳がないことに気付いた。

WEB通帳ではなく紙の通帳なのだが、どこに仕舞ったのかが分からない。

貴重品を仕舞いそうな場所を探してみたが見当たらない。クローゼットの奥まで確認してから再度探す。机の引き出しも念の為外してみる。

しかしそもそも私物が少なく、記憶を失くしてから何度も片付けをしている部屋だ。新たな発見なんてない。
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