円満夫婦ではなかったので


一時間程電車に乗って帰宅したのは、午後七時を過ぎていた。

両親は外出しているようで不在だった。そう言えばどこかの会社の創立パーティーに出席すると言っていた。

シャワーを浴びてすっきりしてから、冷たいカフェオレを作りひと息ついた。

離婚の目途がたったおかげで、とても穏やかな気分だ。

なかなか考える余裕がなかった未来についてのイメージも鮮明に浮かんでくる。

(離婚が成立したら契約社員から正社員になりたいな。通勤しやすいところに家も借りたいし……)

少しずつ生活を立て直そう。

そんなことを楽しく考えていたとき、スマホが鳴った。彬人からだった。

浮かれていた気分が、波が引くようにさっと消えていく。

日記を読んで以来、彬人と連絡を取っていなかった。

悪気がないとはいえ、彼が過去を知っていたということがどうしても気になって、上手く話せそうになかったから。

とはいえ、いつまでも避けている訳にはいかない。

園香は一瞬躊躇ってから、スマホを手に取った。

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