円満夫婦ではなかったので

「名木沢氏とは他に何を話したんだ? 日記が見つかったことも言ったのか?」

「私は離婚する気だと伝えた。彼は自分の妻が不倫をしていると知っていたから大して驚いてなかったかな。日記のことは彬にしか言ってない。瑞記にも名木沢さんにも完全ではないけど記憶が戻ったって話してある。その方が変な誤魔化しとかをされないかと思って」

とくに瑞記は姑息な手段を使いそうな印象があるから、手の内は明かさない方がいい。

「名木沢さんも希咲さんの浮気調査をしていたそうで、証拠があるみたい。離婚調停で使うなら貸してくれるって約束してくれたんだ。だからこれ以上は泥沼にならずに離婚出来ると思う」

「……そうか」

彬人が複雑そうな表情を浮かべた。

「どうしたの? 何か気になる?」

証拠が手に入ったと言ったら、もっと喜んでくれると思っていたのに。なぜ気が進まないように見えるのだろう。

「いや……ただ、名木沢氏を信用し過ぎるのはよくないと思って」

「それは分かってる。でも、話してみたら悪い人ではなかったよ。彼もいろいろ反省しているみたいだし」

「園香は以前、富貴川に対してもそう言っていた」

彬人の言葉に、園香はうっと息を呑んだ。

そう言われてしまうと、自分の人を見る目に自信が持てなくなる。
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