円満夫婦ではなかったので
「証拠が必要だとしても、交換条件には応じるなよ。もし何か要求されたら弁護士に相談してから返事をしろ」
「分かった、そうするよ」
彬人の中で、園香の信用はすっかりなくなっているらしい。
まるで子供に対するように、しつこく注意をされてしまった。
(それだけ気にしてくれているってことだよね)
「伯父さんと伯母さんも、口には出さなくても相当心配しているぞ」
「うん。これ以上、心配かけないようにする……でも結婚してまでこんなに迷惑かけちゃうなんて、情けないなあ……もう二十七歳なのに」
その二十七歳の年も、すでに半分が経過している。半年後は二十八歳だ。
一年分の記憶がないせいか、年を取るのが早く感じる。
「二十八歳までには、全てを終わらせて、やり直していたいな。それが今の目標」
「出来るだろ。ささやかな夢だ」
普段は鋭さを感じる彬人の切れ長の目に、優しさが滲んだ。
「うん。そうだね」
この重い荷物を背負っているような息苦しさから解放されるのは、あと少し。
彬人が言う通り、油断しないで頑張ろう。
園香は自分に言い聞かせた。