円満夫婦ではなかったので
ベストパートナー

緩やかなカーブを描く栗色の髪。細いのに出るころは出ている身体包むのはベージュのスーツで、ブラウス胸元から僅かに谷間が見える。

目じりが少し下がった大きな瞳が、園香を観察するように見つめていた。

彼女はしばらくすると、なにかに驚いたように潤いがある厚めの唇を右手で覆った。
指先の上品なピンクベージュのフレンチネイルが、よく似合う。全ての手入れが行き届いた美しい女性。

(この人は……)

名乗られなくても直感した。彼女が夫が“誰よりも信頼する”パートナーだ。

しかし一体なぜこの場にいるのだろう。

病院で会うのは難しいと理由もあわせて伝えている。退院日だって同じようなものだ。それくらい分かりそうなものなのに。

思わず夫に非難の目を向けてしまったが、彼は園香の気持ちに気付かないのか、それとも気にしないのかにこにこ上機嫌に微笑みながら口を開いた。

「園香、こちらは何度か話した、ビジネスパートナーの名木沢希咲さんだ」

瑞記の言葉と同時に希咲が微笑む。

「お久しぶりです、奥様。あ、ごめんなさい覚えていないんですよね」

すぐに反応出来なかった園香を見て、希咲が困ったように眉を下げる。

彼女に記憶の件を知られているのは分かっていたけれど、こうも遠慮なく言われると気分が良くない。

「私たち何度か会ったことがあるんですよ。奥様が私たちの仕事についてかなり気にしていたようなので、丁寧に説明させて貰ったんです」

よくない先入観があるせいか、彼女の言葉に含みがあるように感じてしまう。

希咲とは対照的に暗い表情の園香の態度に苛立ったのか、瑞記が責めるような表情になる。
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