円満夫婦ではなかったので


「彬、長々付き合わせてごめんね」

実家に向かう車内で、園香は気まずい思いで彬人に声をかけた。

流れとはいえ夫婦の話合いに同席するはめになり、きっと居たたまれない気持ちだっただろう。

瑞記と顔見知りだったとはいえ、ふたりは殆ど会話をしていなかったし。特に彬はずっと黙ったままで、難しい顔だった。

彬人はバッグミラー越しに園香をちらりと見てから口を開く。

「気にするな。それより部屋を見る時間があまりなかったようだったがよかったのか?」

「うん、まあ」

話し合いの後、瑞記と希咲は仕事に戻ると言っていたので、ゆっくり家を見てみようと思っていた。ところが彼らは出かけると言いつつなかなか動く様子がなかった。

園香が自室で荷物などを確認しているときも、なぜか瑞記がついて来て後ろに立って待っていた。

『瑞記、私のことは気にしないで仕事に戻ってね』
『いや、園香が心配だし待ってるよ。もし何か分からないことがあったら僕がいた方がいいからね』

そんな風に待たれるとゆっくりするのは申し訳ない気持ちになって、園香は必要最低限の荷物を持参したバッグに詰めるとすぐに部屋を出たのだ。
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