円満夫婦ではなかったので
「自分の部屋を見ても何も響くものが無かったし、荷物を持ち出せたからいいかな」
リビングと同じフローリングに白い壁。ベッドを置くとあまり他の家具を置けなくなる小さな部屋が園香の私的な空間だった。
狭いが部屋からベランダに出られるようになっているため、それなりに開放感があった。
家具はナチュラルウッドのもので、ファブリックはベージュ系で揃えられていた。リビングと同様シンプルで特徴のないインテリアで可もなく不可もない。
造り付けの半畳サイズのクローゼットの中はすっきりしていて、収納場所を覚えていなくても必要な着替えなどはすぐに探し出せた。
(この一年の間に、ずいぶん片付け上手になったみたい)
「実家には一カ月くらいいるんだよな?」
部屋の様子を思い出していると、彬人の声がした。
「うん、その予定」
「また荷物を取りに行く必要が出来たら、車を出すから」
「え?」
口数が少なく口調も淡々としたものだけれど、彬人は親切だ。
園香は自然と微笑んだ。
「ありがとう。助かるよ」
「ああ」
高速に乗る頃には、外は日が落ちてすっかり暗くなっていた。
流れていく景色をなんとなく眺めていると、ときどき視線を感じる。
きっと彬人が園香の様子を気にしているのだろう。
その割に話しかけて来ないのが彼らしい。