円満夫婦ではなかったので
「そう言えば、彬は今どこの部署で働いているの?」
園香の方から話題を切り出してみた。
彼は三年前は販売促進室に勤務していたがその後台湾の店舗に転勤になった。
「今はWEBサービス事業部だ」
「意外。希望したの?」
彼はなぜかSNSが大の苦手だし買い物もオンラインショッピングはなしという同年代では珍しいタイプだ。
「希望した訳じゃないが命令だから仕方ない」
彬人はうんざりしたようすで眉を顰めた。
「ふふ。そうだね。まあその内異動になるだろうから、頑張ってね」
「ああ」
彼は父の評価が高く将来有望だ。上に立ったときに役立つようにいろいろな部署を経験させられているのかもしれない。
ちなみに園香は経理部で働いていた。本当は広報を希望していたのだけれど。
その後、それなりに彬との会話が弾み、いつの間にか実家に近付いていた。
おしゃべりで気分転換をしたのと、安心出来る実家に帰って来たことで園香はほっと胸をなでおろした。
「ようやく帰って来たね」
園香が弾む声で言うと、彬人が小さく笑った。けれどすぐに浮かない表情になった。
「しばらくは実家でゆっくりしてるといい」
「え? うん、そのつもりだけど」
なぜ改めてそんなことを言うのだろう。
「あまり冨貴川のことで考えすぎない方がいいと思う」
園香は目を瞬いた。
(さっきの瑞記との会話を聞いていてそう言ってるのかな?)
客観的に見ても、園香と瑞記は距離を置いた方がいいということだろうか。