円満夫婦ではなかったので


六月上旬。退院してから一カ月が経とうとしていた。

実家で過ごしている為、園香の生活は平穏そのものだ。


怪我も順調に回復しており、松葉杖なしで歩けるようになっているが、記憶は相変わらず戻っていない。


夫の瑞記からは定期的に連絡が来る。

園香からも週に三回くらいはメッセージを送っていた。内容は近況報告のようなもので、深いものではない。

それでも上っ面のメッセージさえ送らなくなったら瑞記との縁が切れてしまいそうな気がして、作業的に送っていた。

瑞記の方も同じような感覚なのだろう。
いかにも社交辞令といった文面は読んでも全然楽しくなくて、恋愛をしているときの心が弾むような想いや、切なさは何もない。

ただ彼の動向はある程度把握することが出来た。

瑞記は相変わらず忙しくしているようで、先日も希咲と九州まで出張に行ったそうだ。

なんでもクライアントの紹介で、向こうの会社の商品パッケージを手掛けることになったのだとか。
張り切っている様子が伝わって来た。
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